200年以上の歴史を持つ農家屋敷を改修した古民家旅館「二百年の農家屋敷 宮本家」(埼玉県・小鹿野町)を運営する宮本荘グループが創業30周年の節目を迎えた。自身のキャリアを生かし、現役のときのように利用者にファンになってもらえるようオリジナリティ満載の力士のおもてなしを日々提供する12代当主で元幕内力士の宮本一輝社長(=写真、元・剣武輝希)に、節目を迎えての想いや今後の展望を聞いた。 【聞き手=本紙社長・石井 貞德 構成=後藤 文昭】
――グループ創業30年を迎えて、今のお気持ちはいかがですか。
父と先祖、そして何より今までお越しいただきましたすべてのお客様に対しての感謝の気持ちでいっぱいです。宮本荘グループは今から50年前、父が代々受け継がれてきた農家屋敷を改装して民宿にしたのが始まりです。その後宮本荘グループに発展し30年、自分は力士を引退した後、今から10年前に社長業を受け継ぎました。現在グループでは「二百年の農家屋敷 宮本家」と「西谷津温泉旅館宮本の湯」「ペンション森の風みやもと」体験農園「秩父ふるさと村」を運営しています。
――グループの運営で心掛けていることは。
大相撲は妥協が許されない世界で、強い気持ちを持ち続けていないと生き残ることができません。私も親方には「甘えは絶対にダメだ。甘えを克服しなければ関取という栄光もない」と厳しく言われ続けていました。この言葉は引退したあとも大切にしていて、社長としてグループを運営するうえでも「宿を大きくするぞ」という強い気持ちと向上心を持ち、自分を律し続けながらここまで歩んできました。
――節目の年を迎え、新たな展開は考えられていますか。
「二百年の農家屋敷 宮本家」と「貸切ペンション森の風みやもと」、2館の風呂を改修しました。宮本家の方は、レンガ風呂を力士気分を味わえる仕掛けを随所に施した風呂に生まれ変わらせています。風呂場の壁面には、日本相撲協会公認の浮世絵師、木下大門氏に描いていただいた秩父夜祭りのデザインの化粧まわしをつけた剣武の浮世絵を飾らせていただきました。また秋には、私が実行委員長を務め30周年もかねての記念として秩父市内にて、大相撲の巡業秩父場所の開催を計画しています。
――新しい施設を整備する計画はありますか。
施設を新しく建てる予定はありませんが、「二百年の農家屋敷 宮本家」と「宮本の湯」の部屋数は増やします。宮本家は全6室の宿ですが、年内中に最高グレードの新客室を新たに1室設けます。一方の宮本の湯は、小中学校の体験学習や社員研修など団体でご利用いただくことが多いのですが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、以前より1室当たりの人数を少なくしなければいけなくなったことが理由です。これに加え、来年から大相撲の合宿を誘致できるよう、土俵の建築も考えています。毎年大相撲の合宿が誘致できれば、大相撲の迫力を間近で感じたいということで宿泊客が増えると思いますし、何よりまちの活性化につながると思います。大相撲の巡業や合宿の誘致など、自分にしかできないことを通じ、秩父エリアの観光を考え、地域経済に貢献したいと常に考えています。
――グループ全体を今後どのように育てていかれますか。
体験農園「秩父ふるさと村」を発展させることが一番大きな目標です。同施設は今注目の新旅スタイル農泊に利用できる施設として注目が集まっていて、夏休み期間には多くの家族連れや自然体験キャンプなどで賑わっていますが、さらに開発を進め、宿に宿泊していただいたあと、2日目に遊んでからお帰りいただけるような宿泊型テーマパークに育てていきたいと考えています。
――ありがとうございました。